2016年11月10日木曜日

プチ小説 ~ある日のデイサービス~

 「今日は卓球やらへんの?」昼食後、ある利用者からの一言!!
職員と共に40分程汗を流した後、2人はゼエゼエ。
2人のうちの1名は小柄な職員、もう1名は高齢者とは思えない
元気な女性。週に2回は見られる光景だ。
 ふと、4階の窓から外を眺めると、黄色に色づいてきた稲穂、
緑豊かな山々、大和高原を象徴する風景が広がっている。
 1階のデイサービスに下りると、かたや塗り絵をしておられ、
かたや利用者同士のオセロに熱中しておられ、はたまた違う
場所では理学療法士とご利用者が談笑しながら、機能訓練に
取り組まれている。
「今日は昼からお茶会やったなー」とまた他の利用者からの呼び掛け。
そうやった今日は地域住民ボランティアお茶会の日である。
「替わりにいつものレクレーションはないんやなー?」
いつも午後から行う集団でのレクリエーションを楽しみにされている
ご利用者は多く、少々不満そうな様子もあるが、朝からのお茶会の
準備で建てられた番傘に何か公家の香りが漂い、ご利用者も
少し浮かれたような楽しそうな様子が見てとれた。
 お茶会ではいつもの様子とは違って、作法に注意しなければと
緊張の面持ちの皆さん!!
 気付くと、もう帰りの時間が迫っている。「今日はハーモニカは
お持ちですか?」職員が問うと、いつもみんなの合唱に合わせて
吹いて下さるご利用者がハーモニカを用意して、きれいな音色が
聞こえてきた。
「わーすーれーがーたきふーるーさーと」
お別れの歌を唄い、名残惜しそうにデイサービスを後にされる面々。
「明日も頼むで!!」
その声が耳に残って離れない秋の夕暮れである。

0 件のコメント:

コメントを投稿